▶︎▶︎▶︎ 氣鍼医術 鍼術指南極意

氣鍼医術の定義

 

1:氣鍼医術とは、日本の風土と、伝統文化により培われ熟成した、独自の繊細・微妙な、はり医術『経絡治療』を継承するものである。

 

2:氣鍼医術とは、病気の原因を『経絡の不調和』にあると認識し、その『不調和経絡の虚実を補寫調整する』ことで胃の気・生命力の充実を図り、もって病苦を除去する鍼灸術をいう。

 

3:氣鍼医術とは、微鍼をもって皮膚にやさしく語りかけるがごとく『経穴上空』から、もしくは『極く浅く接触・刺入』し、経絡における『氣』の補瀉調整をおこない病苦を除去する『極浅し刺の鍼灸術』を言う。

経絡治療の定義

病態を気血の変動として統一的に観察し、その病変を経絡の虚実となし、経穴をこれが診断と治療の場として鍼灸を以って補寫調整する随証療法である。  

(経絡治療要綱)

氣鍼医術における言葉の定義

1:『脉締を得る』とは、『胃の氣』を得ることなり

 

一鍼入魂することにより、『広がった脉状が細く縮まり、堅い脉状が柔らかくなり、躁がしい脉状が静かになり脉が締まる』ことを『脉締を得る』と定義している。『広(こう)が縮(しゅく)』、『堅(けん)が柔(じゅう)』、そして『躁(そう)が静(せい)』となることはすなわち『胃の氣が充実する』ということであり、治療成功の目標となる。

2:「良脈」とは、胃の気・生命力の充実を言うなり

 

病苦を除去するための自然治癒力が、高まった脉状を『良脉(りょうみゃく)』と言い『中脉(ちゅうみゃく)よりやや下に在り、細く締まり、艶と和緩と時季脉を帯び、滑ら且つ律動的な脉状』と定義している。換言するに、良脉とは『胃の氣が充実した脉』であり、力強い生命力そのものをあらわしている。この生命力を最高に高めることが氣鍼医術の最大の目標であり、それゆえに病苦・病症が除去されるのである。

3:氣鍼・氣刺鍼・空中氣鍼

 

気鍼(きしん)・氣刺鍼(きししん)・空中氣鍼(くうちゅうきしん)

 

氣鍼医術の基本鍼法である。

皮部・孫脉・絡脉・経脉における氣血営衞の虚実を補瀉調整し、病苦を除去する鍼法をいう。

4:適応側(てきおうそく)・片方刺し

 

本治法において、左右ある経絡経穴の虚実を捉え、必ず『虚したる片方』を選経選穴し補法をなす。この片方の経絡を『適応側』と呼び、この鍼法を『片方刺し』という。

5:相剋調整

 

本治法において、難経六十九難の治療法則にのっとり相剋する経絡の虚を捉え、ともに補う『重虚極補』の治療法をいう。

扁鵲は七十五難の末尾において「その虚を治すること能わずんば何ぞ其の余を問わん」と言明している。我々経絡治療家はまず十二経を用いてその虚を調える。すなわち生命力の強化に全力を集中すべきである。こうした観点に立つならば、この重虚極補の治療法とも称すべき相剋調整の治療方式は今後、七十五難に代わって用いられるべきであり、将来、環境不良化による虚証時代に、その適応範囲がますます拡大されると確信する次第である。 

(経絡治療要綱)