鍼灸師の真の姿〜鍼風(しんぷう)を磨くために

薩摩の国に「示現流」という剣術がある。樫の木に木刀を何千・何万回と、上段の構えから振り下ろす鍛錬をするという。

 

そしてその鍛えられた実力は、戦場で敵将を兜ごと真っ二つにしたといわれている。

鍛錬の鍛とは、千日の行をいい、錬とは万日の行を意味する。

 

すなわち、鍼灸術における奥深い治療実力「鍼風(しんぷう)」は、単純とも思える手技動作のなかに全ての要素が包括されている事を確信し、鍛練することでそれは獲得される。

換言するに、はり医術としての治療実力「鍼風(しんぷう)」は、繰り返しの稽古により鍛え抜かれたものに与えられるのである。

本書の内容はまさに「示現流」に似て、病苦を真っ二つにできる治療実力「鍼風(しんぷう)」の涵養を目的とした「はり医術」の指南書である。

 

「氣鍼医術鍼術指南極意(葛野玄庵著)」より